北海道のお歳暮の定番、新巻鮭。役目を終えた鮭箱を活用する、ものづくりプロジェクトのウェブサイト制作。多様な活動を「製品」「空間」「イベント」の3つの視点から紹介した。

北海道のお土産

「何かおもしろそうなことをやっているけれど、よくわからない」。ウェブサイトをつくりはじめた2018年のARAMAKIは、そんな感じだったと思う。それは、言語化より活動量が上回る、若いプロジェクトには往々にしてある状態だ。宮大工の村上智彦さんとギター職人の鹿川慎也さんを中心に、さまざまなひとが集っては、わいわいがやがやいつも何かが起きていた。

村上さんは、Uターン後、改装中の自宅の素材をもらう際にたまたま鮭箱に出会い、その存在に惚れ込み、バッグをつくった。それを見て、鹿川さんが合流。木箱メーカーや水産加工会社に足を運ぶうちに、北海道の林業、水産加工業、漁業、流通、鮭の生態系について学んでいく。そこで感じた驚きやおもしろさ、危機感を分かち合うためにイベントをはじめた。なんて自然な歩みなんだろう、と思う。

「あれをやろう」「これをやろう」とどんどんアイデアが出てきては、すぐに新作が生まれ、イベントもしょっちゅうある。でも、この勢いとサークル的な体制のままでは続けられない。まずは定例会を組むところからはじめ、情報共有の仕組みを整え、これからどんな風になっていったらいいかを話し合った。鮭箱の活用を基点に、鮭文化を守り育てていく。そうした少し先の姿に重なっていけるようなウェブサイトを目指した。

川で生まれ、海で育ち、生まれた川に戻ってくる鮭のように、さまざまな場所を回遊してまた帰ってくる、北海道を代表するお土産になったらいいなと思う。空港で、物産展で、『白い恋人』や六花亭の花柄の包装紙に混ざってARAMAKIが並んでいる風景を想像した。

あれから3年後、2022年現在、村上さんは函館空港案内所『LOCAL INFORMATION がっつり道南』のリニューアルに参加し、ARAMAKIの製品が什器として使われることになった。ちゃんと夢を見る。と同時に、そんなことは一旦忘れて、楽しみながら手を動かすことに集中するというのは、このプロジェクトに集うひとびとに教えてもらったなと思う。

『ARAMAKI』

企画・編集・執筆

川村庸子

アートディレクション&デザイン

佐々木 信・石田愛実(3KG

エンジニア

瀧原 界

写真・映像

辻田美穂子

翻訳

辻田美穂子、Jon Cartwright

Special thanks

村上道子、鹿川陽子

公開日

2019年1月1日

URL

ARAMAKIウェブサイト

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