北海道恵庭市に暮らす宮大工・村上家のウェブサイトリニューアル。ひとや素材とのかかわり方、つくり方を解体。活動拠点となる築70年の一軒家を軸に、その成り立ちや幹となる考え方をかたちにした。

村上家のアルバム

村上家は、智彦さん、道子さん、恵ちゃん、はるくんの4人家族だ。犬のカートもいる。ひとつ屋根の下で、話して、食べて、寝て、また話して。隔月で2泊3日、仕事現場やご実家を巡り、季節を繰り返しながら三思した。

GEN COMPANYは村上智彦さんの屋号だが、相談相手としても、料理や経理担当としても道子さんの存在は大きい。そこで、毎回、村上さん、道子さんとそれぞれ一対一でじっくり話し、最後に3人の時間をもつことにした。多岐に渡るプロジェクトを整理し、この先のイメージを語り合い、個人事業主仲間として仕事のフローや予算設計を見直した。話題は、自然とご両親やこどもたち、地域にも広がっていく。こうした対話を通じて、「本をつくりたい」という当初の依頼は再考され、ウェブサイトをリニューアルすることになった。

制作チームは、わたし以外は恵庭と札幌在住者で結成した。ひとと何かをやるというのは、ほんとうにいろいろなことがある。見晴らしがいい場所に立ったら誰かと共有したいと思うだろうし、いらいらしたら愚痴って、悩んだときに相談する相手は近くに何人かいた方がいいだろう。そして、わたしが知らない土地で仕事ができたのは、こうした周りにいるひとたちとの対話を通して、村上さんたちの存在や活動をいくつもの視点から眺めることができたお陰だ。一本一本の線が交差し、網の目になる。「ものづくりを通して、コミュニティが育まれていく」という村上さんの言葉に、あらためて一票を入れたい。

ウェブサイトは、話し好きな村上さんが語りかけるような、村上家を訪れたときに感じる、温かみのある手触りにしたいと思った。写真はスタイリングをしすぎず自然光で、つくる「プロセス」を見せる。文章は口語体で、工房に転がっている木片をデザインのアクセントに。日日のお知らせはSNSに任せ、年に一度、アルバムをつくるように付き合っていけるウェブサイトを目指した。

夫婦や親子、家族ってなんて不思議な運動体なんだろうと思いながらともに過ごした一年半。恵ちゃんとはるくんが中学生になって寮に入る前、食卓が賑やかな村上家のひとつの時代に立ち会えたことはとても得難い経験だった。

いまでも季節ごとに「ともの会」の道子さんお手製の保存食が届き、新しいプロジェクトが動いたり、困ったことがあったりしたら村上さんから連絡がやってくる。いつの間にかわたしも、この家族のアルバムに親戚のように混ぜてもらっている。

『GEN COMPANY』

企画・編集・執筆

川村庸子

デザイン

高田大輔(MOOI

エンジニア

瀧原 界

写真・映像

辻田美穂子

翻訳

辻田美穂子、Dean Humphrey

Special Thanks

村上道子、村上恵太郎、村上喜彦

公開日

2019年10月1日

URL

GEN COMPANYウェブサイト

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